富山大学地域連携戦略室 COC+統括コーディネーター 特命准教授 尾山 真 氏
富山大学の就職状況について
「ALL富山COC+」事業は、県内就職率の10%アップを目標にしている。富山大学は平成26年、約1,366名が就職している。内訳は県内就職者528名、県外就職者838名で県外就職者の割合が多くなっている。 数字的に見ると、県内高校出身で富山大学に進んだ学生は県内就職率が8割以上と比較的高い。ところが県外高校出身学生は、地元へ戻ったり、都会へ出ていく割合が多くなっている。このため、県外出身学生には、富山の魅力や富山で働く魅力を伝えていくことが重要と考え、教育の中で「富山を知ってもらう」「富山に愛着を感じてもらう」プログラムも取り入れている
出口戦略(県内就職の支援に関する取組)
県内就職支援セミナーの開催や合同企業訪問、中長期インターンシップ等、さまざまな取組を行っているが、その中の一つとして「海外事業展開する県内企業等の魅力発見並びにグローバル人材の育成」にも取り組んでいる。海外進出する企業もどんどん増えている中、グローバルな人材育成も重要なテーマの一つと考えている。留学生も富山県で就職し、県内企業の発展に寄与してもらいたい。 さらに、留学生支援として「外国人留学生と海外展開に関心のある県内企業経営者との交流会」も前年度は2回開催している。本日ご出席のマルタさんが富山で就職されたのも、この懇談の場がきっかけだったと聞いている。
教育戦略(地域課題解決型人材育成プログラム・授業実施支援)
教育戦略としては、「地域課題型解決型人材育成プログラム」を実施している。地域を学ぶ科目、実際に地域に出て諸問題を解決する科目を設定し、修了した学生には「未来の地域リーダー」という称号を付与している。現在、富山大学だけでなく、県内高等教育機関で実施している。
入口戦略(県内出身者の入学に対する取組など)
県内出身者を大学に迎え入れる取組として、高校生向けのキャリアデザイン講座、県内大学等合同進学説明会(全高等教育機関)の他、大学コンソーシアムと協力して、高等教育機関を紹介する進学パンフレットも制作した。
社会貢献・広報戦略・その他
ALL富山COC+は、「信頼の循環」をテーマにしている。地方創生は、富山大学を含めが高等教育機関が県や諸団体の協力をいただきながら進めていくというスタンスが重要。また、大学としても積極的に地域と連携していこうということで、講演や会議への参加、資料作成の協力、学生の参加要請、研究活動のための教員紹介など、地域とのつなぎ役も行っている。 大学が持つ「人を育てる力」を活かし、地域と連携した人材育成事業にも取り組む。「魚津三太郎塾」、「たかおか共創ビジネス研究所」等に加え、県外では和歌山県田辺市が取り組む「たなべ未来創造塾」と社会人の人材育成を行っている。
未来の地域リーダー(育成人材像)
どういう人材を育成しなければならないか。目指す将来像として「魅力ある地方の創生」と「地域産業による地域活性化」、二つのテーマを掲げている。 国際競争力の強化も課題の一つととらえている。留学生が就職し、富山の企業の海外拠点の社員として活躍する機会も増えていくと思われるので、富山を、日本を支える重要な一員として、留学生を位置づけていきたい。
未来の地域リーダーエントリー制度
現在、「未来の地域リーダー塾(仮)」に取り組んでいる。これは、大学が協力し、学生の主体的な活動を支援していく活動。学生とコミュニケーションをとる中で、「調べたいことがあるのでサポートしてほしい」「県外出身なので富山を知るためのサークルを立ち上げたい。顧問をしてほしい」といった声があった。その声に応えるべく、富山に興味を持ち、富山を知ろうと努力する学生たちを後押ししていきたいと考えている。 こういった様々な取組を通して、富山に必要な人材が富山に定着するよう推進している。
富山県商工労働部労働雇用課 雇用対策係長 廣瀬 智範 氏
グローバル人材活躍促進事業の実績①県内企業就職者数
外国人留学生の県内企業就職者数調査は2013年3月卒業生を対象にスタート した。しかし、初年度はゼロだったことから、外国人留学生を対象とした合同企業説明会や就職のカウンセリングなどの取組を重ね、2014年、2015年は各5名、2016年は16名、2017年は21名と大きく増えた。グローバル人材活躍促進事業の実績②県内就職先業種別割合
富山県の産業構造を色濃く表しており、製造業が過半数を占めている。以下、製薬業、観光・宿泊業と続く。
県内企業のグローバル展開
アジア全体の進出事業所数は2001年から4.0倍に増加した。中国は4.7倍、タイは4.2倍、インドネシアは3.6倍に増加している。中でもインドは2→38事業所、ベトナムは2→35事業所と、急激に増加している状況にある。
「働く場」として見た富山県の特徴
働く場としてとらえた富山県の特徴として、収入の豊かさが挙げられる。家計収入と可処分所得は全国トップクラス。暮らしやすく、働きやすく環境が整っている。
また、犯罪や火災発生の少なさも全国トップクラス。安全に安心して暮らせるのも富山県の特徴であり魅力である。
グローバル人材活躍促進事業を通じて就職した企業
グローバル人材活躍促進事業を通じて、外国人留学生が富山県を代表する企業に就職。医薬品産業では廣貫堂、ダイト、機械・金属産業ではYKKグループ、不二越、IT産業ではコーセル、立山科学グループ、日立国際電気などで活躍している。
2017年度「グローバル人材活躍促進事業」の展開
外国人留学生向け県内企業説明会(7/19・参加予定約20社)、県内企業向け外国人留学生活用促進セミナーを開催する。県内のものづくり企業が一堂に会する「ものづくり見本市(10/27)」会場でも外国人留学生向け就職セミナー・企業ツアーを開催。県内企業を知ってもらう取り組みを行うほか、就職カウンセリングは随時行っていく。
株式会社能作 産業観光部産業観光課 リナウド・マルタ 氏
トリノ大学(イタリア)を卒業後、文部科学省国費外国人留学生奨学金・日本語・日本文化研修生として2014年10月から2015年9月まで、富山大学で研究活動に取り組んだ。 元々、祭に興味があり、獅子舞を研究したいと思い、富山に来た。私にとって初めての日本は金沢。金沢もすごく良いところだが、私が選んだのは富山。日本語の勉強も、日本での生活も、私にとってすべてチャレンジで、とても良い経験になった。富山大学で学べて本当に良かったと思っている。 留学期間中、友達もたくさん増え、富山が大好きになり、富山で就職したいという気持ちが強くなった。そんな時、富山企業説明会で(株)能作を知り、社長と出会ったことが就職につながった。 能作は高岡の伝統産業で、外国人の社員は私しかいない。専門用語や社会人としてのマナーなど勉強することがたくさんあるが、周りの人たちに相談にのってもらっている。高岡市民となり、高岡で生活を始めたのが、去年の8月。町内の皆さんとも交流があり、ゴミを出す日も教えてもらったりしている。言葉を知らず、文化もわからないと、コミュニケーションをとるのは難しい。でも、それこそが私のやりたかったこと。気持ちを日本語で伝えたいし、日本の文化をもっと学びたい。チャレンジしたいという気持ちはどんどん強くなっている。